5分も経たなかっただろうか、ふがふがという呼吸音は、次第に「ぜーはーぜーはー」という口呼吸に変わっていった。
ここまで来て、私は何かおかしいなと、起きることを決めた。
しかしこの時も「怖い夢でも見ているのだろう」と、のんきに構えていたのだ。
なぜなら、この日も、いや、ずっと前から夫は元気いっぱい健康そのものだったからだ。
夕飯だって、ラーメンを替え玉して2玉もかっ食らう食欲もあった。
次の日は旅行でわっくわくの夜なのだ。体調を崩す可能性なんて露にも思わなかった。
「夫?どうしたー?」 悪夢から目覚めさせようと声をかけて体を揺すった。
しかし激しい呼吸は止まらない。いや、むしろどんどん加速していく。
夫は仰向けになり、弓なりに背筋を反らしてこれでもかと空気を体に取り込もうと苦しそうにしている。
?!!!!!
雷に打たれたように、私の眠気は一気に吹き飛び、アドレナリンが体中に放出されるのを感じた。
「何か、とんでもないことが起こっている」
さっきよりも更に大きな声で、名前を呼んだ「夫っ!夫っ!!」
部屋が暗くて表情がよく見えない、光の速さで照明を点けに走る。
私の中に大量に放出されたアドレナリンのせいか、私は本当にこれまで経験したことのない速さで動けた。
体感的にはまさに”光の速さで”だった。