【自己紹介シリーズ】夫が突然倒れました その日③

 

電気をつけると、夫の表情がよく見えるようになった。
どう見ても異常事態が起きている顔だった。

必死の形相。

おそらく息を吸っても吸っても苦しいのだろう。
白目は充血し、息をしたいのと、私に話したいのと相まって、
声にならない声で、息を吐くとき「うーゔー」とうなり声が出る。
会話ができないことはわかっているのに、私はバカみたいに頭を支えて「夫、どうした?どうした?」と、問いかけ続けていた。
おそらく時間にして1~2分程度だっただろう。

夫はついに「ゔーゔー」と最後の言葉にならない言葉を残し、息を引き取った。

人が死ぬことを「息を引き取る」と表現するのは、まさにその通りのことが起こるからなんだと、初めて人の死を目の当たりにして知った。

夫が息を引き取った後(意識が落ちたことを確認したあと)、
私は急いで救急車を呼んだ。

救急車を呼ぶ判断ができた私は、冷静だと思っていた。
なのに、どうしてだろう、119番が 思い出せないのだ。
110 違う、 114 なんか違う気がする。
焦る気持ち、思い出せない番号

「あれ?何番だっけ?!」

焦る、怖さがどんどん私の中に入ってくる。だんだん声が震え始めた。
大きく息を吸って、吐いた時ようやく思い出した。

119番

「事件ですか?事故ですか?」
電話口から、救急隊の声が聞こえる。
事故? 事件? どっちなの?あれ?わかんない。
「夫が急に苦しそうにして、意識がなくなりました。救急車、お願いします」
そんなことを言ったような気がする。パニックながら、ちゃんと救急車を呼べた。